
昭和三十五年五月五日を中心に一週間、青い窓創刊二周年記念の構成展
「はるかなる流れ」が開催された。会場は郡山駅にほど近い郡山商工会議所
二階だった。
詩と写真のパネルによる構成展であるが、構成の主題は「水」であった。
つまり、水の誕生から海へ至るまでの過程を、泉、早瀬、小川、河、海の五つのブロックに分け交響詩風に見た
てて、各楽章はイメージの通い合う作品群で構成したのである。
さらに、会場の中ほどに、つまり小川と河の間に「ポンポン蒸気の部屋」を設けて、おしゃべりと落書きの場
とした。そして、装飾はすべて青い風船にしたのである。
会期中の来館者は二千人をこえ、初めての構成展にそれぞれが感銘を持って帰られたように思う。その感想文を
いくつか御紹介しよう。
五月八日、今日母の日にこんなに心豊かになるもよおしに接したことは本当に幸せでした。ともすれば荒みがちな
世の中に、たとえ、ひとときでも童心に帰れたことは、本当に楽しい一日でした。童心のある限り「青い窓」はいつ
迄も続くことでしょう。
遠くはなれて暮らしている老いた母を想い、少時の間でも幼い頃を思い出し、そして子供達の幼かった頃などを糸を
たぐる様に思い出されてたのしい一日でした。
橋本 琴子
「青い窓」のことは、新聞紙上にてつとに承知いたしております。毎月一回、所用の出張で郡山に来ると、必ず柏屋
さんの「青い窓」を見、子供の詩心にふれることを楽しみにしていました。今日、はからずも「はるかなる流れ」構成展を
拝見させていただき、あの窓でみた、読んだいくつかを、又々見い出してなつかしく、又我々大人どもの失われた童心を
よびさましてくれました。
会津の農村の子らには、夢がない、詩心がない、大人を小さくしたのが会津の子供だとばかり思っていましたのに。
戦中、戦後の人心の荒廃から、既に新しい芽が育っていることに気がつきませんでした。
会場構成も見事です。テーマと写真と詩と、楽しく拝見しました。ただ構成に大人の感覚からの子供を見る思いがしますが―。
後藤 光二郎
たのしく、そして、ゆかいに、こころゆくまで飽かずに、わたしのこころのなかに吸いとりました。
ファンタジアと、こどもの胸のいぶきとが、これから、五月の空をスタートとして、放たれてゆくことでしょう。
とても詩のいのちが生きていました。ありがとう、ほんとうにありがとう。
太田 隆夫
これらの感想文は「はるかなる流れ」の終曲におかれたかわいいポストさんに投函されたものである。
その後、創刊十周年記念構成展「子どもは見ている」を、昭和四十三年五月に新装となった郡山商工会館で、さらに
二十周年記念構成展「キャベツの中の宇宙」を、昭和五十三年五月に郡山市・うすいデパートでそれぞれ開催している。
(平成二年 青い窓八月号に掲載)
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当時の郡山において、有志の集まりで児童詩の構成展を開催することは、画期的なことでした。
詩を静かに鑑賞するだけではなく、一息ついたり、子どもたちは落書きをしたりと、
楽しいアイディアがいっぱいの構成展だったとか。
子どもたちの笑い声が響き、和やかな雰囲気に包まれていた会場は、詩心や童心を感じる
心豊かな場であったことでしょう。
(解説・青い窓の会事務局)